世界一読む価値のないモノ

どーでもいいこと、テキトーかつ気まぐれに書いていきます。時間をどぶに捨てたい方はぜひ。

【短編小説】純粋な願い

 

 透明感のある白い肌。スッとした鼻。艶やかな長い黒髪。瑞々しい唇。まんまるな大きい瞳。大人の色っぽさをもつ美しい顔でありながら、どこかあどけなさのある顔。男のプライドを傷つけない程度に背が高く、華奢な体格でありながら、胸はほどほどに大きい。小鳥のような美しい声。そして親は大企業の社長。いろんなことに興味を持ち、趣味とし、きわめている。頭もよく、通っている学校では常に上位の成績。かといって人に厳しいわけではなく、妬む者はゼロではなかったが、ほとんどの者に好かれている女性。ただ一つ、難を挙げるとすれば、彼女が思う自分より優れた者の存在を許せないことだった。彼女の幼い頃からの努力のおかげで、今現在そんな者はいないのだが。

 彼女の趣味の一つに占いがあった。今までありとあらゆる占いの書を読み漁った彼女だったが、古本屋で見たことも聞いたこともない種類の占いの本を見つけ、早速購入し読んでみた。ラテン語の本だったが、以前、別の趣味で必要となった言語で、すでに習得していたので問題なかった。ページを進めていくうちに彼女はその本が占いの本というより魔術の本であるとわかった。魔術の本といっても、様々な魔術の使い方や説明が載っているわけではなく、魔人を召喚する方法が載っているだけだった。いろいろと面倒な準備が必要だったが、彼女はなんなくこなしていった。最初は半信半疑だったが、準備をすすめるにつれて根拠はないが、この召喚方法は本物であると確信した。

 召喚条件の満月の夜、彼女は一か月で準備し作り上げた祭壇の前に立ち、ブツブツと呪文を唱えた。最後まで呪文を唱えた後、祭壇の中央に置かれた純金の空っぽであったはずの棺から男がでてきた。男といってよいのかはわからなかった。体のかたちは人間そっくりだったが、それは緑の皮膚をしていたからだ。だが、醸し出す雰囲気がいかにも魔人といった感じだった。しばらく沈黙が続いたが、やがて魔人から話を切り出した。

「あなたの願いを一つ、叶えて差し上げます。願いを言ってください。そのために私を召喚したのでしょう? ただし、そちらの書物にも記述しましたが、願いを増やしてくれなどといった願いや自然の摂理に反する願いは無理です。私は百年に一度しか魔法は使えず、また自然の摂理に逆らった願いは私を生み出した今は亡き最初で最後の魔術師との契約で禁止されているのです。」

召喚できると確信はしていたが、彼女は願いを考えていなかった。美貌はすでにもっている。頭脳も金も十分だ。彼氏はいないが、つくろうと思えば、いつだってつくれる。親しい友人もいるし……。不老不死を思いついたが、自然の摂理に反している。彼女は精一杯考えた。

「あっ!」

「思いつきましたか?」

「あなたみたいな魔人は他にもいるの?」

「いいえ、いませんが。それが何か?」

「いえ、別に。じゃあ、願いを言うわ。私の叶えてほしい願い。それは……。

魔人さん、あなた死んで。」